フリーランスにとって、仕事に対する評価が直接収入に跳ね返ってくるというのは自明のことです。しかしここでフリーランスの仕事を、単にクライアントから受注した「仕事」を完成させてその対価を受け取るという意味に限定せずに考えると、帳簿書類を作成して適正な税務申告を行うということもまた、大切な仕事です。これは一見面倒なだけで無益なことのようですが、ちょっと知識を仕入れることにより、「節税」という形で資産を守ることが出来るのです。
フリーランスとして活躍するにあたり、納税地の税務署に「開業届」と共に「青色申告承認申告書」を提出することで、いわゆる「白色申告」という通常の申告を行うのに比べて、最大65万円までの特別控除を受けることが出来ます。もっとも青色申告をするためには、申告を申請しようとする年の3月15日まで(新規開業が1月16日以降の場合には、業務開始日から2か月以内)に提出しておく必要があります。
そして青色申告を行う事業に従事する人が、その事業主と家計を共にしている配偶者であったり15歳以上の子供などであった場合には、その給与を青色事業専従者給与として、事前の届出書の内容を下に適正額の範囲内につき、必要経費に算入することが出来るのです。もっとも青色事業専従者と認められれば、同時に配偶者控除の対象や扶養親族になることはできません。
また事業が思うように行かず、損益通算を適用しても損失すなわち赤字の場合に、その赤字を最大で3年間翌年度以降に繰り越すことが出来るのです。従って初年度に赤字50万円を計上しており、翌年度に50万円の黒字に転じた場合、翌年度にはその所得50万円に対して課税されるのではなく、初年度の赤字を差し引いて所得は0として計算するため、結果としては課税されないことになるのです。
もっともこれだけのメリットがあるにもかかわらず「白色申告」を選ぶ例が少なくなかった理由は、用意しなければならない帳簿書類の煩雑さです。青色申告の記帳は、複式簿記と呼ばれる正規のものが原則です。そして帳簿書類として、仕訳帳や総勘定元帳という主要簿の他に、いくつかの補助簿の作成が必要であり、確定申告が終わっても原則として7年間は保存しておかなければなりません。ただし近年は専用の会計ソフトが出回っており、領収書を必ず保管しておき、それをきっちり入力すれば、比較的簡単に帳簿を作成することが出来るようになっています。また以前とは異なり「白色申告」の場合にもこのような帳簿の作成が原則として必要になった現在、「白色申告」を敢えて選択するメリットは無きに等しいのです。